Kirico’s diary

女子は数年で寿退社が普通だった昭和の最後のあたりからずっと会社員をやってきた私が考えていること

かくれんぼ

近所に買い物に行こうとエレベーターの下ボタンを押そうとした瞬間、

上の階から子供の大きな泣き声がするのに気づいた。

きっと、時々エレベーターで出会う、去年幼稚園に入った男の子だな。

多分、まだ乳児の弟じゃなくてお兄ちゃんの方。

同じエレベーターに乗るのがなんとなく気まずく、ボタンを押すのをやめる。

 

マンションの入り口を出ると、少し前を、まだ泣きながら、ふてくされながら

ゆっくりと歩いている男の子がいる。

その少し前を、まだ乳児の弟を抱いたお父さんと、お母さんが歩いている。

 

お父さん、お母さんたちが角を曲がった後、しばらくして角を曲がる男の子。

泣き声がピタリと止む。

 

角を曲がらずまっすぐ道を進んだ私が後ろを振り返ると、

ちょうど別のマンションの入り口に隠れていたお父さんお母さんが笑いながら

出てくるところ。

 

男の子はもうすっかり泣き止んで、少しほっとしながら、

でもまだ少しふてくされながら、

だんだんとお父さんお母さんに近づいて歩いていく。

 

お父さんに抱かれながら、首を傾けて心配そうに兄の様子を覗き込んでいる弟。

ようやく追いついてお母さんと手を繋いだ男の子。

 

君は今日のことをいつまで覚えているのだろうか。

こんなに幸せな日の、一瞬の、紛れもない愛情を。